住宅ローンを返済している、今年は医療費が多くかかった、iDeCoに加入している。こうした人がふるさと納税の控除上限額を調べるときは、ほかの控除のことも一緒に考える必要があります。本記事は、ほかの控除がある場合に上限額を調べるときの注意点を、国税庁・総務省・自治体の公式情報をもとに整理するものであり、個別の税額や上限額を計算・断定するものではありません。上限額の調べ方の基本(目安表とシミュレーターの使い方)は、ふるさと納税の控除上限額を調べる方法で解説しています。
ほかの控除があると、上限額の目安は変わりうる
下松市は「ふるさと納税の上限額は、所得税の課税所得額と住民税の所得割額から試算することができます」と説明しています(下松市「ふるさと納税の上限額の計算方法について」)。医療費控除や住宅ローン控除などのほかの控除は、この課税所得額や、実際に納める税額に関わるため、ほかの控除がある人は、上限額の目安や実際に控除される額が変わることがあります。
そのため、総務省が公開している目安の表も、そのままでは当てはまらない場合があります。同じ趣旨の目安の表(「全額(※)控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」)を掲載している鹿児島市の資料では、表の対象を「給与収入のみ。住宅ローン控除等を受けていない方。」と明記しています(鹿児島市「全額控除される寄附額の目安」(PDF))。ほかの控除がある人は、控除の金額を入力できるシミュレーターで確かめることになります。
本記事で扱う控除を、先に整理しておきます。
| 控除 | 控除のしかた | 会社員が控除を受ける手続き |
|---|---|---|
| 医療費控除 | 所得控除 | 確定申告 |
| 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) | 所得税額から控除(所得税から控除しきれない分は翌年度の住民税から控除) | 最初の年は確定申告、2年目以後は年末調整 |
| iDeCoの掛金(小規模企業共済等掛金控除) | 所得控除 | 年末調整または確定申告 |
(国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」、総務省「個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」より作成)
医療費控除がある場合
医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に、自分や生計を一にする配偶者などの親族のために支払った医療費が一定額を超えるときに受けられる所得控除です(国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」)。控除額は、実際に支払った医療費の合計額から保険金などで補てんされる金額を差し引き、さらに10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を差し引いた金額で、最高200万円です(同上)。
所得控除なので、医療費控除を受けると税金の計算のもとになる所得が小さくなり、ふるさと納税の上限額の目安にも関わってきます。
もう一つ大事なのが手続きです。国税庁は医療費控除の申告方法を「医療費控除に関する事項その他の必要事項を記載等した確定申告書を提出してください」と案内しています(同上)。つまり、医療費控除を受ける年は、会社員でも確定申告をすることになります。これがワンストップ特例に影響します(後述)。
住宅ローン控除がある場合
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、一定の要件のもとで、住宅ローン等の年末残高の合計額等をもとに計算した金額を、所得税額から控除する制度です(国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」)。医療費控除のように所得から差し引くのではなく、税額から直接差し引く点が異なります。
手続きは年によって変わります。国税庁によると、給与所得者は「控除を受ける最初の年分」は確定申告書を提出する必要があり、「2年目以後の年分は、年末調整でこの特別控除の適用を受けることができます」(同上)。
また、所得税から引ききれない分は住民税に回ります。総務省は、平成21年から令和12年12月31日までの間に居住して所得税の住宅ローン控除を受けた人について、「前年分の所得税において控除しきれなかった金額がある場合は、翌年度の個人住民税で控除されます。」と説明しています(住民税から控除できる額にも上限があります)(総務省「個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」)。
この住民税からの住宅ローン控除と、ふるさと納税との関係について、練馬区は次のように案内しています(練馬区「よくある質問と回答」質問7856)。
- ふるさと納税の上限額を計算するときは「住宅ローン控除を控除する前(調整控除後)の住民税所得割額を用いるため、上限額への影響はありません」
- ただし、住民税所得割額からの税額控除は「調整控除、配当控除、住宅ローン控除、寄附金控除の順」に行われるため、住宅ローン控除の額が大きい場合は、ふるさと納税の上限額の計算で求めた控除を全額受けられなくなる場合がある
どの程度影響するかは、収入や住宅ローン控除の額によって一人ひとり異なり、本記事では計算しません。総務省も「具体的な計算は、お住まいの市区町村にお問い合わせください。」としています(総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」)。
確定申告をする年は、ワンストップ特例の申請が無効になる
医療費控除を受ける年や、住宅ローン控除の最初の年は、確定申告をすることになります。ここで注意したいのがワンストップ特例との関係です。国税庁は「確定申告を行う方は、ふるさと納税ワンストップ特例の申請が無効となるため、ワンストップ特例の申請をした分も含めて寄附金控除額を計算する必要があります」と明記しています(国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」)。周南市も、ワンストップ特例の申請をしていて、医療費控除や住宅ローン控除のために確定申告をしようとしている人に向けて、「ふるさと納税の寄附金控除についてももれなく申告してください」と呼びかけています(周南市「ふるさと納税の控除」)。
反対に、住宅ローン控除の2年目以後で年末調整により控除を受けていて、ほかに確定申告をする必要がない場合は、寄付先が5団体以内であれば、ワンストップ特例を申請して使うことができます。総務省はワンストップ特例の対象を「確定申告の不要な給与所得者等で、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内である場合」としています(総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」)。申請の手順や無効になるケースは、ふるさと納税のワンストップ特例のやり方で解説しています。
iDeCoなど、ほかの控除も上限額の目安に関わる
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金も、小規模企業共済等掛金控除という所得控除の対象です。国税庁は、この控除の対象となる掛金に「確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金」を挙げています(国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」)。控除は、確定申告のほか、年末調整の際に勤務先へ提出する「給与所得者の保険料控除申告書」でも受けられます(同上)。
このほか、生命保険料控除や地震保険料控除なども、シミュレーターによっては入力欄が設けられています。「住宅ローン控除と医療費控除だけ」と思い込まず、自分が受けている控除を一通り確認しておくと、入力漏れを防げます。
年の途中では、ほかの控除の金額もまだ確定していない
ふるさと納税の控除上限額は、寄付をした年の所得等をもとに決まります(詳しくはふるさと納税の控除上限額は「いつの年収」で決まる?で解説しています)。ほかの控除も同じで、年の途中ではまだ金額が決まっていません。
- 医療費控除:対象はその年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費です(国税庁「No.1120」)。年の途中では、その年の医療費の総額は分かりません。
- 住宅ローン控除:控除額は住宅ローン等の年末残高の合計額等をもとに計算します(国税庁「No.1211-1」)。
下松市も「ふるさと納税を行う時点では、その年の所得や所得控除が確定していないため、正確な上限額を算出することはできません。」と案内しています(下松市「ふるさと納税の上限額の計算方法について」)。寄付をする時点では、ほかの控除についても見込みの金額で調べることになる点を押さえておきましょう。
シミュレーターの「詳細入力」で、ほかの控除を入力する
ポータルサイトのシミュレーターには、年収と家族構成だけで試算する簡易版と、ほかの控除まで入力できる詳しい版(本記事では「詳細入力」と呼びます。呼び方はサイトによって異なります)を分けているものがあります。たとえばふるさとチョイスは「かんたんシミュレーション」と「控除上限額シミュレーション」を用意しており、後者には「社会保険料等の金額」「小規模企業共済等掛金の金額」「生命保険料の控除額」「地震保険料の控除額」「医療費控除の金額」「住宅借入金等特別控除額」の入力欄があります(ふるさとチョイス「控除上限額シミュレーション」)。ほかの控除がある人は、こうした詳しい版を使います。
入力するときは、次の点を確認してください。
- 医療費控除の欄に入れるのは「控除の金額」か「支払った医療費」か:たとえばふるさとチョイスの「医療費控除の金額」欄は、支払った医療費の合計額ではなく、国税庁と同じ計算式で求めた医療費控除の金額を入れる欄として説明されています(ふるさとチョイス「控除上限額シミュレーション」)。どちらを求めているかは、各サイトの欄の説明で確認します。
- 住宅ローン控除の金額をどこから持ってくるか:2年目以後で年末調整を受けた人は、源泉徴収票の「住宅借入金特別控除の額」欄が手がかりになります。ただしこの欄は、年末調整をした人の源泉徴収票にのみ記載され、控除額が所得税額を超える場合は所得税額を限度に記載されます(国税庁「『住宅借入金特別控除の額』欄」)。シミュレーターの欄がどの金額を求めているかは、各サイトの説明で確認してください。控除を受ける最初の年の人は、年末調整ではなく確定申告で控除を受けるため、この欄には記載されず、見込みで考えることになります。
- iDeCoの掛金を二重に入れていないか:年末調整でiDeCoの掛金の控除を受けた人の源泉徴収票では、「社会保険料等の金額」欄にiDeCoなどの小規模企業共済等掛金の額も含まれ、その額が内書きされます(国税庁「『社会保険料等の金額』欄」)。シミュレーターで社会保険料と小規模企業共済等掛金の欄が分かれている場合は、同じ金額を両方に入れていないか確認します。
- 表示された金額は目安として使う:ふるさとチョイスも「控除上限額は、今年の所得金額から算出されるため、目安としてお考えください。」と表示しています(ふるさとチョイス「控除上限額シミュレーション」)。ほかの控除も見込みで入力している以上、目安の金額ぎりぎりを狙わず、余裕を持たせた金額で寄付額を決めておくのが安全です。
個別の税務相談についての注意
まとめ
住宅ローン控除や医療費控除、iDeCoなどのほかの控除がある人は、目安の表がそのまま当てはまらないことがあるため、控除を入力できるシミュレーターで確認します。医療費控除を受ける年や住宅ローン控除の最初の年は確定申告が必要で、ワンストップ特例の申請をしていても無効になるため、ふるさと納税の寄付も確定申告に含めます。住民税から住宅ローン控除を受けている場合は、ふるさと納税の控除を全額受けられなくなる場合があると案内している自治体もあります。ほかの控除の金額も年末まで確定しないので、目安より余裕を持たせた金額で寄付額を決めておくと安心です。
上限額の調べ方の基本はふるさと納税の控除上限額を調べる方法、ワンストップ特例の申請方法はふるさと納税のワンストップ特例のやり方で解説しています。
参考にした情報
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
- 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
- 国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」
- 国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
- 国税庁「『住宅借入金特別控除の額』欄」
- 国税庁「『社会保険料等の金額』欄」
- 総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」
- 総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」
- 練馬区「よくある質問と回答」質問7856
- 下松市「ふるさと納税の上限額の計算方法について」
- 周南市「ふるさと納税の控除」
- 鹿児島市「全額控除される寄附額の目安」(PDF)
- ふるさとチョイス「控除上限額シミュレーション」


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