今年または来年、産休・育休に入る、あるいは復帰するという会社員の方は、給付金で暮らす期間がある年に、いつもの感覚で寄付してよいのか、と不安になると思います。本記事は、休業のある年に控除上限額の目安が変わる理由と、調べるときの注意点を、2026年10月時点の公式情報で整理するものです。個別の税額や上限額を計算・断定するものではありません。
休業中の給付金は、課税されない扱い
まず、休業中に受け取る給付金の税金上の扱いです。厚生労働省のQ&Aには、「育児休業等給付は非課税所得なので、課税対象となりません。」とあります(厚生労働省「Q&A〜育児休業等給付〜」)。国税庁の確定申告書等作成コーナー(令和元年分の解説)も、育児休業基本給付金は雇用保険法の「失業等給付に該当し、同法第12条の規定により課税されないこととなっています。」と説明しています(国税庁 確定申告書等作成コーナー「育児休業基本給付金の支給を受けている配偶者」)。
産休中の出産手当金も非課税所得だと、ふるさとチョイスは説明しています(ふるさとチョイス「育休・産休中でもふるさと納税はできる!」)。
ただし、出産手当金については国税庁などの原文を確認できていません。受け取る給付の扱いは、ご加入の健康保険や勤務先に確認してください。
給付金の金額や手続きそのものは、この記事では扱いません。
上限額の目安が下がる方向になる理由
控除上限額は、寄付をした年の所得をもとに決まります。土岐市は「ふるさと納税の寄附金控除は、寄附した年の所得等から算出した税額が控除されます。」と説明しています(土岐市「寄附金控除の上限額の計算」)。「いつの年収か」の考え方は、ふるさと納税の控除上限額は「いつの年収」で決まる?で解説しています。
ここで効いてくるのが、先ほどの給付金の扱いです。ふるさとチョイスは、育児休業給付金や出産手当金は上限額を計算するための年収には含まれないと説明しています(ふるさとチョイス「育休・産休中でもふるさと納税はできる!」)。
つまり、その年の1月から12月に会社から受け取った給与が少ないほど、上限額のもとになる年収も小さくなり、前年と同じ働き方の年より、上限額の目安は下がる方向に動きます。給付金で生活費が足りていても、上限額の計算では数えない、という点が見落としやすいところです。
入る年・休業中の年・復帰する年で何が変わるか
考え方はどの年も同じで、その年の1月から12月に会社から受け取る給与がいくらか、です。年の区切りごとに整理すると、次のようになります。
| 年の状況 | 上限額のもとになる給与 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 休業に入る年 | 年初から休業開始までの給与(同じ年に復帰した場合は復帰後の給与も) | 休業に入った後の給付金は数えない。前年より給与の合計が少なくなりやすい |
| 休業が1年を通して続く年 | 会社から給与が支払われなければ、ほとんど無い場合もある | 控除のもとになる税額も小さくなるため、寄付を見送る選択もある |
| 復帰する年 | 年初から休業までの給与があればその分と、復帰後の給与 | 復帰の時期がずれると年間の合計も変わる。復帰後の給与が休業前と違う場合は、その金額で見込む |
| 復帰の翌年以降 | 通年で働いた給与 | 休業前と同じ働き方に戻っていれば、前年の源泉徴収票が再び目安として使いやすくなる |
(この表は、上記の考え方をもとにした整理であり、公式に定められた区分ではありません。)
休業が年をまたぐ人は、年ごとに分けて考えてください。同じ休業でも、12月に休業へ入るか1月に入るかで、その年の給与の合計は大きく変わります。
配偶者の控除にも関わることがある
もう一つ、見落とされやすいのが配偶者への影響です。国税庁によると、「控除対象配偶者とは、その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。」とされています(国税庁「No.1191 配偶者控除」)。要件には、配偶者の合計所得金額の上限が含まれます。
育児休業基本給付金は、控除対象配偶者に該当するかどうかを判定する場合の合計所得金額に「含まれません」と、国税庁の確定申告書等作成コーナーが説明しています(前掲の作成コーナー)。
配偶者特別控除は、国税庁の作成コーナーの解説で「配偶者の所得金額に応じて受けられる所得控除です。」とされています(国税庁 確定申告書等作成コーナー「配偶者特別控除とは」)。
したがって、パートナーが休業して給与が減り、その年の合計所得金額が要件の範囲に収まる場合は、もう一方の配偶者が配偶者控除や配偶者特別控除を受けられることがあります。受けられるかどうかで、その人の上限額の目安も変わりえます。ただし、所得の要件は年分ごとに改正されています。国税庁は、令和8年度の税制改正で「扶養親族等の所得要件の改正等が行われました。」とし、これらの改正は原則として令和8年分以後の所得税に適用されると案内しています(国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」)。
2025年分と2026年分で数字が違う可能性があるため、該当するかどうかは、その年分の国税庁の案内か、税務署・税理士に確認してください。共働きの場合の見方は、共働き夫婦が控除上限額を調べるときの注意点にまとめています。
上限額の目安の調べ方
休業のある年に目安を出すときは、次の順で進めます(公式に定められた手順ではなく、考え方の一例です)。
- その年の給与の見込みを出す:年初から休業に入るまでの給与明細と、復帰後の見込みの給与を足します。源泉徴収票は年が終わらないと確定しないため、年内に寄付する時点では見込みになります。
- 給付金の分は入れない:育児休業給付金・出産手当金は、上限額を計算する年収に含めません(前述の整理)。
- 配偶者の状況も確認する:自分が配偶者控除などを受けているか、パートナーの休業で変わるかを確認します。
- 公式シミュレーターに入力する:入力項目や目安表の見方は、ふるさと納税の控除上限額を調べる方法で解説しています。
- 表示された金額より少なめの範囲で寄付額を決める:復帰の時期や勤務時間はずれることがあり、見込みが外れやすい年です。休業のある年は、年内の寄付を急がず、年末近くに見込みを見直す方法もあります。考え方は、年の途中で転職・退職した年のふるさと納税と同じです。
上限額の目安が分かったら、ポータルサイトから寄付先を選びます。ポータルサイトの一つに、次のサービスがあります。
休業中の年の住民税の通知と、ふるさと納税の控除は別の年の話
住民税のうち所得割は、前の年の所得をもとに決まります。東京都主税局は「所得割は、前年の所得金額に応じて課税されます。」と説明しています(東京都主税局「個人住民税」)。そのため、休業中の年に届く住民税の通知の金額は、その年の収入の少なさとは一致しません。通知の金額は前の年の所得で決まったもので、今年の寄付の上限額とは別の話です。
一方、ふるさと納税による住民税の控除は、寄付をした年の翌年度の住民税で行われます。総務省は、住民税分は翌年度の住民税から控除(住民税の減額)されると説明しています(総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」)。
ワンストップ特例を使った場合も、土岐市は「ふるさと納税を行った翌年の6月以降に支払う住民税の減額という形で控除を受けることになります。」と案内しています(土岐市、前掲)。たとえば2026年に寄付した分は、2027年度の住民税で控除される、という関係です。
休業中の住民税の納め方に不安がある場合は、お住まいの市区町村に確認してください。
個別の税務相談についての注意
まとめ
育児休業給付金などの給付金は課税されない扱いで、上限額を計算する年収にも含まれません。そのため、休業のある年は、会社から受け取る給与が減る分だけ、上限額の目安が前年より下がる方向になります。年ごとに1月から12月に会社から受け取る給与で考え、前年の源泉徴収票をそのまま使わず、見込みで調べて少なめに寄付額を決めてください。パートナーの休業は、配偶者控除の判定を通じて、もう一方の目安にも関わります。住民税の通知は前年の所得、ふるさと納税の控除は寄付の翌年度、と年がずれる点も押さえておくと混乱しません。
ふるさと納税全体の流れは、ふるさと納税、初めての会社員が知っておきたい一連の流れで解説しています。


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